リケンNPRが2026年2月13日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の決算は、売上高こそ前年より減りましたが、純利益(会社に最終的に残る利益)は41%以上の大幅な増加となりました。「売上が減って利益が増える」という一見矛盾した結果の背景には、経営統合によるコスト削減や特別利益の計上があります。通期純利益の年間目標に対する達成率はすでに96.6%で、配当(株主への利益分配)も増額予定です。
この会社、何をしているの?
リケンNPRは、自動車エンジンの内部で使われる精密な機械部品を作っている会社です。「ピストンリング」という部品が主力製品で、これはエンジン内のピストン(燃料を爆発させて動く部品)に取り付ける金属の輪のことです。車のエンジンが正常に動くために欠かせない部品で、まるで「エンジンの心臓部を守るバンドエイド」のような役割を担っています。
もともとは「株式会社リケン」と「日本ピストンリング株式会社」という2社が経営統合(合体)して2022年に誕生した会社で、自動車部品分野で国内トップクラスのシェアを持っています。売上の約76%が自動車・産業機械部品事業で、その他に水道管などに使う「配管・建設機材事業」、半導体製造装置向けの「熱エンジニアリング事業」も手掛けています。
「熱エンジニアリング事業」というのは、半導体(スマートフォンやAIサーバーの”頭脳”にあたる電子部品)を作る工場の装置向けに、精密な熱管理部品を提供するビジネスです。AI需要の拡大を追い風に、成長が期待される新しい柱として今期から独立したセグメント(事業区分)となりました。
2026年3月期 第3四半期の業績まとめ
2025年4月から12月の9ヶ月間(第3四半期累計)の連結業績は以下のとおりです。
- 売上高(会社全体の売り上げ):1,213億円(前年比 ▲5.0%)
- 営業利益(本業で稼いだ利益):99億円(前年比 +6.1%)
- 経常利益(本業以外の損益も含めた利益):135億円(前年比 +14.4%)
- 純利益(最終的に会社に残る利益):106億円(前年比 +41.1%)
- 自己資本比率(会社の財務の安全性を示す指標):68.3%(前期末66.3%から改善)
注目ポイント①:「減収増益」の理由――コスト削減と特別利益
売上高は前年比5%減りましたが、利益はすべての段階で増加しました。この「減収増益」(売上は減ったが利益は増えた)を実現した要因は主に3つです。
第一に、経営統合によるシナジー(相乗効果)です。リケンと日本ピストンリングが合体したことで、工場や調達コストの無駄を減らし、営業利益が改善しました。第二に、為替差益(外国との取引で円安が有利に働いた分)として6億円を計上しました。第三に、退職給付信託(社員の退職金のために積み立てたお金)の返還益として約30億円という大きな特別利益が入りました。これが純利益を大きく押し上げた最大の要因です。
一方、自動車部品(385百万円)と配管事業(895百万円)の製造設備について、合計約13億円の減損損失(設備の価値が落ちたと判断して費用に計上する処理)も計上しています。これはリスクとして注目しておく必要があります。
注目ポイント②:3つの事業セグメントの明暗
リケンNPRの事業は3つに分かれています。
- 自動車・産業機械部品事業(売上919億円・▲5.3%):中国での日本車販売不振が響いたが、利益は逆に+5.4%と改善。コスト削減の成果が出ています。
- 配管・建設機材事業(売上131億円・▲6.3%):国内の新築市場縮小が直撃し、利益は▲39.8%と大幅に落ち込みました。
- 熱エンジニアリング事業(売上71億円):半導体・エレクトロニクス向けに今期から独立セグメントへ昇格。AI需要を追い風とした成長が期待されます。
注目ポイント③:通期純利益の達成率はすでに96.6%!配当も増額
通期(1年間)の純利益目標110億円に対し、Q3(9ヶ月)終了時点ですでに106億円を稼いでおり、達成率は96.6%です。残り1四半期でわずか4億円を稼ぐだけで年間目標を達成できる計算です。
配当についても朗報があります。今期の年間配当予想は1株あたり165円で、前期の130円から35円の増配が予定されています。
- 前期(2025年3月期)年間配当:130円
- 今期(2026年3月期)年間配当予想:165円(+26.9%)
- 中間配当(支払済み):50円 / 期末配当(予定):115円
今後の見通し
会社が発表している2026年3月期の通期業績予想(変更なし)は以下のとおりです。
- 売上高:1,600億円(前期比▲6.1%)
- 営業利益:110億円(▲6.8%)
- 経常利益:150億円(+2.2%)
- 純利益:110億円
世界の自動車生産は増加傾向にあるものの、中国での日本車シェア低下が続いている点が懸念材料です。また、米国の関税政策の動向が今後の業績に影響を与える可能性があります。一方、半導体向けの熱エンジニアリング事業は成長が期待され、事業の多角化という観点から注目されます。
まとめ
リケンNPRの2026年3月期Q3決算は、自動車部品市場の逆風を経営統合の効果とコスト削減で乗り越え、「減収増益」を達成しました。純利益の通期達成率は96.6%に達しており、35円増配も予定されています。今後は半導体向け熱エンジニアリング事業の成長と、自動車部品事業の中国リスクへの対応がカギとなります。
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を行うものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

