溶射加工の最大手であるトーカロが2026年8月5日、2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の決算を発表しました。売上高は前の年の同じ時期より9.9%増えましたが、営業利益はほぼ横ばいの小幅な減益でした。同じ日に通期の業績予想と配当予想の上方修正(見通しの引き上げ)も発表しています。
この会社、何をしてるの?
トーカロは神戸市に本社を置く、溶射(ようしゃ)加工の国内最大手です。
溶射とは、金属やセラミックスの粉を高い熱でとかし、部品の表面に高速で吹き付けてコーティングする技術です。フライパンの焦げ付き防止加工の、工業用で高性能な版をイメージすると近いかもしれません。表面を覆うことで、部品がすり減りにくく、さびにくく、熱に強くなります。
主なお客さまは半導体(スマートフォンやパソコンの頭脳にあたる部品)を作る装置のメーカーや、鉄鋼・産業機械の会社です。半導体をつくる装置の内部は薬品や熱にさらされるため、こうした表面処理が欠かせません。生成AI向けのデータセンター投資が続いていることも、需要の追い風になっています。
第1四半期の業績サマリー
主な数字は次のとおりです。自己資本比率とは、会社の資産のうち返さなくてよいお金の割合を示す数字です。
| 項目 | 前年同期 | 当期(2027/3期1Q) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 151億51百万円 | 166億58百万円 | +9.9% |
| 営業利益(本業のもうけ) | 38億36百万円 | 38億15百万円 | △0.5% |
| 経常利益 | 40億53百万円 | 40億24百万円 | △0.7% |
| 四半期純利益(最終のもうけ) | 25億80百万円 | 26億17百万円 | +1.4% |
| 自己資本比率 | 74.8%(前期末) | 69.9% | △4.9pt |

売上は1割近く伸びた一方、利益はほぼ横ばいでした。前の年の同じ時期に営業利益が42.7%増と大きく伸びていたため、その高い水準を保った形とも言えます。
注目ポイント1:本体は好調、海外子会社が足を引っ張る
中身を分けて見ると、明暗が分かれています。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 溶射加工(単体) | 122億92百万円 | +13.9% |
| 国内子会社 | 7億88百万円 | +8.0% |
| 海外子会社 | 29億8百万円 | △3.2% |
| その他表面処理加工 | 6億56百万円 | +7.7% |

主力の溶射加工(単体)は、半導体・FPD(テレビやスマホの画面に使う薄型表示装置)分野の売上が豊富な受注残を背景に計画を上回るペースで進み、経常利益は31.1%増えました。
一方で海外子会社は、半導体分野の一部のお客さまが在庫調整(在庫が多いため発注を絞ること)に入った影響で、経常利益が29.7%減りました。全体の利益が横ばいにとどまった主な理由はここにあります。
注目ポイント2:名古屋工場の新棟へ先行投資
第1四半期末の総資産は956億13百万円と、前の期末より63億21百万円増えました。名古屋工場の新棟を建てるための土地を取得したことなどで、有形固定資産が24億98百万円増えています。
この投資の資金は主に長期借入金でまかなわれ、負債は62億83百万円増えました。その結果、自己資本比率は69.9%と前の期末より4.9ポイント下がっています。もっとも7割近い水準は保たれており、財務の余裕は残っている形です。
借金を増やして工場に投資するのは、これから先の需要増を見込んだ動きと考えられます。
今後の見通し:通期予想と配当を引き上げ
第1四半期の実績と足元の受注状況をふまえ、会社は通期の予想を引き上げました。修正後の売上高は前の期より17.1%、営業利益は18.4%増える見通しです。
| 項目(通期) | 前回予想 | 今回修正予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 650億円 | 685億円 | +5.4% |
| 営業利益 | 150億円 | 167億円 | +11.3% |
| 経常利益 | 150億円 | 167億円 | +11.3% |
| 当期純利益 | 102億30百万円 | 108億60百万円 | +6.2% |
| 1株当たり年間配当 | 86円 | 92円 | +6円 |
配当も引き上げられ、中間配当は前回予想から2円増の44円、期末配当は4円増の48円、年間では92円の予想となりました。前の期の実績85円からの増配で、連結配当性向は50.4%です。
前回予想の年間86円は、中間42円・期末44円の合計です。
まとめ
トーカロの第1四半期は、売上が9.9%増えた一方で利益はほぼ横ばいという内容でした。主力の溶射加工は好調でしたが、海外子会社の減益がそれを打ち消した形です。
それでも会社は、半導体関連を中心に好調な売上が続く見込みだとして、通期の予想と配当を引き上げました。名古屋工場の新棟への投資も進んでいます。今後は海外子会社の在庫調整がいつ落ち着くかが、ひとつの見どころになりそうです。
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を行うものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
出典:トーカロ株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」「連結業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」(いずれも2026年8月5日開示)
