総合化学メーカーの東ソー(証券コード4042)が、2026年8月4日に2027年3月期の第1四半期決算を発表しました。経常利益は前の年の同じ時期の約2.4倍にふくらみ、これまで「未定」としていた通期の業績予想もあわせて公表されています。決算短信の数字をもとに中身を見ていきます。
この会社、何をしてるの?
東ソーは、塩と石油から生まれる基礎的な素材を大量につくる化学メーカーです。山口県の南陽事業所と三重県の四日市事業所という大きな工場を持ち、そこから幅広い製品を送り出しています。
つくっているものは、たとえば塩化ビニル樹脂(水道管や床材の材料)、苛性ソーダ(かせいソーダ。紙や洗剤づくりに使う基礎薬品)、エチレンやプロピレン(プラスチックの大もとになる原料)などです。世界でも上位の生産量を持つ製品がいくつもあります。
それだけではありません。半導体づくりに欠かせない石英ガラス(せきえいガラス。高い熱に耐える透明な部材)やスパッタリングターゲット(金属の膜を薄くはりつけるための材料)、排ガスをきれいにする触媒に使うゼオライト、さらに病院で使う血液検査の装置や試薬まで手がけています。土台となる素材と、高い技術がいる製品の両方を持っているのが特徴です。
第1四半期の業績サマリー
| 項目 | 前年同期(2026年3月期1Q) | 当期(2027年3月期1Q) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,451.3億円 | 2,741.7億円 | +11.8% |
| 営業利益 | 160.8億円 | 311.8億円 | +93.9% |
| 経常利益 | 140.8億円 | 343.0億円 | +143.6% |
| 四半期純利益 | 65.3億円 | 194.6億円 | +198.0% |

売上高(商品が売れた総額)は11.8%増にとどまったのに、営業利益(本業で稼いだ利益)はほぼ2倍、経常利益(本業に加えて利息や為替の損得まで入れた利益)は約2.4倍になりました。売上の伸び方に比べて、利益の伸び方がとても大きいのが今回の特徴です。
総資産は1兆4,689億円、自己資本比率(総資産のうち返さなくてよいお金の割合)は57.3%でした。前期末の59.0%からわずかに下がっていますが、化学メーカーとしては安定した水準です。
注目ポイント1:利益が急に伸びた理由
会社が理由としてあげているのは、おもに次の3つです。
ひとつめは在庫受払差(ざいこうけはらいさ)の改善です。化学メーカーは、安く仕入れておいた原料が値上がりすると、その原料でつくった製品を高く売れるため、決算上の利益が押し上げられます。今回は中東情勢の緊迫化でナフサ(石油からとれる原料)の価格が大きく上がり、これが利益を大きく助けました。
ふたつめは販売価格の上昇です。ナフサ高と円安が重なり、塩ビ製品やMDI(ウレタンの原料)などの売値が上がりました。
みっつめは為替差益です。円安によって外貨のやりとりで利益が出たため、営業利益から経常利益にかけての伸びがさらに大きくなりました。経常利益が営業利益より大きく伸びているのは、この影響が中心です。
つまり今回の好調は、自力の販売増よりも、原料価格と為替という外の環境に助けられた部分が大きい、と読めます。
注目ポイント2:5つに組み替えたセグメント
この四半期から、報告するセグメント(事業の区分け)が「石油化学」「クロル・アルカリ」「機能商品」「エンジニアリング」の4つから、「基礎素材」「付加価値素材」「バイオサイエンス」「高機能材料」「水処理エンジニアリング」の5つに変わりました。

いちばん目立つのは基礎素材です。前の年は34億円の赤字でしたが、今回は57億円の黒字に転じました。付加価値素材も39億円から82億円へと倍以上になっています。半導体向けの石英ガラスが伸びた高機能材料は32億円、血液検査などのバイオサイエンスは57億円と、いずれも増益でした。
唯一減ったのが水処理エンジニアリングで、売上は420億円と伸びたものの、営業利益は72億円から66億円へ減りました。
今後の見通し:通期予想をはじめて公表
東ソーは2026年5月13日の決算発表時、中東情勢の悪化で生産計画や原料コスト、需要の見通しが立たないとして、今期の業績予想を「未定」としていました。今回、第1四半期の実績をふまえて、はじめて数字が示されました。
| 項目 | 前期実績(2026年3月期) | 今期予想(2027年3月期) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 10,199億円 | 11,700億円 | +14.7% |
| 営業利益 | 955億円 | 1,050億円 | +9.9% |
| 経常利益 | 1,068億円 | 1,070億円 | +0.2% |
| 当期純利益 | 416億円 | 590億円 | +41.8% |
気をつけたいのは、経常利益の予想が前の期とほぼ横ばいの+0.2%にとどまっている点です。第1四半期だけを見ると2.4倍でしたので、会社は下期にかけて今の追い風がやわらぐと見ているように読み取れます。
当期純利益が41.8%増と大きいのは、前の期に米国子会社(スパッタリングターゲットの製造・販売を行うトーソー・SMD社)で減損損失(げんそんそんしつ。工場などの価値を引き下げて損として計上すること)があった反動が含まれるためです。
配当は中間50円・期末50円の年間100円で、前の期から変更はありません。1株当たり当期純利益の予想は191.63円です。
まとめ
第1四半期は、原料高と円安という追い風にうまく乗り、基礎素材が赤字から黒字に戻ったことで利益が大きくふくらみました。長らく「未定」だった通期予想が出そろったことも、今回の大きな進展です。
ただし通期の経常利益予想は前の期とほぼ同じ水準で、会社自身が下期の環境変化を慎重に見ていることがうかがえます。追い風がいつまで続くのかを、次の四半期で確かめていきたいところです。
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を行うものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
出典:東ソー株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」「連結業績予想の修正に関するお知らせ」いずれも2026年8月4日開示

