あいホールディングス(3076)が、2026年8月19日に2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)の通期決算を発表しました。売上高は前期より28.4%増えて850億2,400万円、営業利益は21.1%増の107億6,200万円と、本業は増収増益になりました。一方で最終的な利益(純利益)は43.7%の減少です。この差がどこから来ているのかを、決算短信の数字で見ていきます。
この会社、何をしてるの?
あいホールディングスは、7つの事業を持つ会社をまとめる持ち株会社(グループ各社の親会社)です。名前だけでは何の会社か分かりにくいのですが、利益の柱ははっきりしています。
いちばん大きいのはセキュリティ機器で、マンションや官公庁向けに防犯カメラや入退室管理などのシステムを納めています。この事業だけでグループの営業利益の6割近くを稼いでいます。そのほか、病院や金融機関で使うカード発行機を扱うカード機器、業務用・個人向けのカッティングマシン(紙やシートを図形どおりに切る機械)を扱う情報機器、計測機器、ビジネスホン等の情報通信、建物の構造設計を請け負う設計事業などがあります。M&A(企業の買収・合併)で事業を増やしてきたグループで、この1年では電話機メーカーのナカヨが新たに傘下に加わりました。
業績サマリー
| 項目 | 前期(25/6期) | 今期(26/6期) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 661億9,700万円 | 850億2,400万円 | +28.4% |
| 営業利益 | 88億8,900万円 | 107億6,200万円 | +21.1% |
| 経常利益 | 90億800万円 | 125億3,500万円 | +39.2% |
| 純利益 | 212億200万円 | 119億3,700万円 | △43.7% |
| 1株当たり純利益 | 405.63円 | 224.08円 | △44.8% |

財務は非常に健全です。自己資本比率(総資産のうち返さなくてよいお金の割合)は80.8%と前期の77.7%からさらに上がり、手元の現金及び現金同等物は545億7,700万円まで積み上がりました。営業活動によるキャッシュ・フロー(本業で実際に入ってきたお金)も108億700万円と、前期の76億4,700万円から増えています。
注目ポイント①:売上を押し上げたのはM&Aと設計事業
売上が28.4%も伸びた最大の理由は、情報通信の売上が271億200万円(前期比129.2%増)と2.3倍になったことです。これは当期からナカヨが連結(グループの業績に合算されること)に加わった影響です。設計事業も大口の耐震診断を受注し、74億3,600万円(同33.6%増)と伸びました。

| セグメント | 売上高 | 前期比 | セグメント利益 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| セキュリティ機器 | 158億9,000万円 | +4.5% | 61億8,700万円 | +0.6% |
| カード機器等 | 24億5,400万円 | △21.0% | 3億1,000万円 | △62.7% |
| 情報機器 | 126億7,100万円 | △6.1% | 5億6,200万円 | +21.6% |
| 計測機器 | 54億4,200万円 | +8.8% | 7億8,600万円 | △4.8% |
| 情報通信 | 271億200万円 | +129.2% | 12億4,900万円 | +84.3% |
| 設計事業 | 74億3,600万円 | +33.6% | 14億8,200万円 | +213.5% |
| その他 | 140億2,600万円 | +16.9% | 3億9,300万円 | +141.1% |
利益面で見ると、稼ぎ頭のセキュリティ機器は61億8,700万円とほぼ前期並みで、増益分は情報通信と設計事業が生み出した形です。一方、カード機器等は主力製品の切り替え期にあたり、利益が62.7%減と落ち込みました。
注目ポイント②:純利益44%減は「前期が特別だった」から
売上も営業利益も伸びているのに純利益が減ったのは、本業が悪化したからではありません。前期は、買収した会社の純資産が買収額を上回ったときに一度だけ計上される「負ののれん発生益」が178億7,800万円あり、これが純利益を大きく押し上げていました。今期の特別利益は固定資産売却益38億3,600万円などにとどまります。
税引前の利益で比べると、前期211億3,900万円に対し今期は161億5,000万円です。前期は税金費用がほぼゼロだったこともあり、見た目の落差が大きくなっています。一時的な要因を除けば、本業の実力は伸びていると読めます。
注目ポイント③:年間配当は125円から140円へ
当期の配当は中間55円・期末70円の年間125円で、前期の100円から25円の増配となる予定です(期末配当は9月25日の株主総会で決まります)。さらに次期は中間70円・期末70円の年間140円が予想されており、2期連続の増配見込みです。
同社は「DOE6%と配当性向50%のいずれか大きい金額」を配当の基準としています。DOE(株主資本配当率)は、利益ではなく会社に積み上がった株主のお金に対して何%を配当に回すかという考え方で、利益がぶれても配当が下がりにくいという特徴があります。当期の実績はDOE5.8%・配当性向55.8%でした。
今後の見通し
2027年6月期の会社予想は、売上高860億円(前期比1.1%増)、営業利益110億円(同2.2%増)、経常利益117億円(同6.7%減)、純利益90億円(同24.6%減)です。今期に固定資産売却益などの一時的な利益があった分、純利益は減る計画になっています。
予想の1株当たり純利益は168.94円で、これに対して配当は140円。配当性向は82.9%と高めの水準です。会社の方針であるDOE基準が効いている形ですが、利益水準に対して配当負担が重くなっている点は見ておきたいところです。
まとめ
M&Aと設計事業が売上を押し上げ、増収増益の決算でした。純利益の大幅減は前期の一時的な利益の反動によるもので、自己資本比率80.8%・手元資金545億円という財務の厚さは変わっていません。配当は125円から140円へ増える予想ですが、来期の配当性向は82.9%と高く、今後は利益の積み上げが伴うかどうかが焦点になりそうです。
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を行うものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
出典:あいホールディングス株式会社「2026年6月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月19日開示)
※金額は決算短信の百万円単位の数値をもとに、億円未満を切り捨てて表記しています。

