農薬大手のクミアイ化学工業が2026年6月9日、2026年10月期の中間期(2025年11月~2026年4月)の業績予想を上方修正(前に出した予想を上に引き上げること)しました。中間の純利益(最終的に手元へ残る利益)は、前回予想のほぼ2倍に増える見込みです。何が起きたのか、やさしく整理します。
この会社、何をしてるの?
クミアイ化学工業は、農薬(作物を病気・害虫・雑草から守る薬)をつくる大手メーカーです。とくに有名なのが、雑草の成長を抑える除草剤「アクシーブ」。この薬は海外でも広く使われている、同社を代表するヒット商品です。事業は大きく2つあり、ひとつは農薬や農業に関わる「農薬及び農業関連事業」、もうひとつは工業用の化学品をつくる「化成品事業」です。静岡県を地盤とし、東京証券取引所プライム市場に上場しています。決算期は、多くの会社の3月とは違い、10月で1年を区切るのが特徴です。
上方修正の中身(前回予想と今回修正の比較)
| 項目(中間期) | 前回予想 | 今回修正 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 928億円 | 1,029億円 | +10.9% |
| 営業利益(本業のもうけ) | 61億円 | 104億円 | +70.5% |
| 経常利益(本業+財務のもうけ) | 82億円 | 137億円 | +67.1% |
| 中間純利益(最終的に残る利益) | 44億円 | 87億円 | +97.7% |
※会社発表(百万円)を億円に換算し四捨五入。1株あたり中間純利益は36.54円→72.24円に増加。前の年の同じ時期(2025年10月期中間)の実績は売上961億円・経常82億円・純利益62億円でした。

注目ポイント①:なぜ大きく上振れたのか
上方修正の一番の理由は、主力の除草剤「アクシーブ」の出荷が前倒しになったことです。アクシーブはこれから、同じ成分の安い後発品(ジェネリック品。特許が切れたあとに他社が作る同等品)がアメリカ市場に入ってくる見通しです。そこで、その前にしっかり売っておこうと販売を強めた結果、本来あとの時期に売れるはずだった分が今の中間期に前倒しで出荷されました。これに加えて、工業用の化学品を扱う化成品事業の販売も好調で、売上・利益をともに押し上げました。
注目ポイント②:いっぽうで特別損失も計上
利益が伸びる一方で、クミアイ化学は中間期に特別損失(一時的に発生する損失)も計上します。これは連結子会社のイハラニッケイ化学工業が手がける「塩素化事業」に関するもので、内訳は固定資産の減損損失(資産の価値が下がった分を費用にすること)5.14億円と、構造改革費用9.07億円の合計およそ14.2億円です。厳しい事業環境に対応するための整理費用です。ただし、こうした特別損失を引いてもなお、中間純利益は前回予想のほぼ2倍に増える見込みです。

注目ポイント③:1年間(通期)の予想は据え置き
今回の上方修正は、あくまで中間期(前半6か月)の予想についてのものです。1年間トータルの通期予想は、2025年12月に出した数字のまま据え置かれました。理由は、中東情勢の緊迫化や紛争の長期化が事業に与える影響を、今まさに精査している最中だからです。会社は「今後の動向しだいで見直しが必要になれば、すぐに公表する」としています。中間が好調だからといって、通期も同じだけ上振れるとは限らない点には注意が必要です。
今後の見通しと注目点
今回のように出荷を前倒しすると、売上の一部は「将来の分を先に計上した」ことになります。そのため、後発品が本格的にアメリカ市場へ入ってきたあとは、その反動でアクシーブの売上が一服する可能性もあります。投資家としては、通期予想がいつ・どの方向に見直されるか、そして中東情勢が原料の調達や輸出にどう影響するかを見ておきたいところです。一方で、化成品事業の好調が続けば、農薬以外のもうけの柱として業績を支えてくれることも期待されます。
まとめ
クミアイ化学の中間業績は、主力のアクシーブの前倒し出荷と化成品事業の好調で、純利益が前回予想のほぼ2倍まで上振れる見込みとなりました。ただし、その伸びには「後発品が入る前の駆け込み的な出荷」という一時的な側面があり、子会社の特別損失や通期予想の据え置きもあります。中身をよく見て判断したいニュースと言えそうです。
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を行うものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。(出典:クミアイ化学工業株式会社「2026年10月期第2四半期(中間期)連結業績予想の修正に関するお知らせ」「特別損失の計上に関するお知らせ」いずれも2026年6月9日開示)

